こんにちは、空間デザイナーのナカザワフミです。
先日、雲田はるこ先生の『昭和元禄落語心中』を読んだので、今回はその感想文です。
満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎。 娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。 昭和最後の大名人・八雲がムショで演った「死神」が 忘れられず、生きる道は噺家と心に決めておりました。 弟子など取らぬ八雲師匠。惚れて泣きつく与太郎やいかに……!? 昭和元禄落語心中・与太郎放浪篇、いざ幕開け!! 満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎。 娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。 昭和最後の大名人・八雲がムショで演った「死神」が忘れられず、生きる道は噺家と心に決めておりました。 弟子など取らぬ八雲師匠。惚れて泣きつく与太郎やいかに……!?昭和元禄落語心中・与太郎放浪篇、いざ幕開け!!
講談社 より
かれこれ15年前の2010年に発表された作品です。私はアニメ放映していた際に知りまして(アニメは2017年放映)、たまたま見つけたら面白くて全話見終えてはいたのですが、先日、漫画を置いてある近所のカフェを訪れた際に文庫版が目に留まり、サラッと読んでいたらアニメ版では語りきれていなかった内容も多かったもので、勢いで全巻大人買い。大人って怖いけど楽しいものですね。
『昭和元禄落語心中』は、タイトルにも含まれている通り、『落語』に関わる噺家(はなしか)たちやその家族、寄席(よせ/古典芸能を上演する大衆的な演芸場)に集まるお客さんとそこで働く人たちなどなどの、人情味もドロドロとした感情も、余すことなく溢れるような人間模様を描いた作品です。
能や浄瑠璃、歌舞伎などと並んで、落語も日本の伝統芸能の1つです。私はTVで笑点をたまに観るぐらいで、本物の落語を体験したことはまだ無いのですが、他の芸能と比べると、とても庶民的で、とても自由な空気を持った伝統芸能のようには感じています。
どの芸能もここまで長く続いた伝統を後世にも伝えていくために試行錯誤していますが、落語は国や自治体からの補助金をほとんど受けず、自分の足で立つことの出来ている数少ない伝統芸能だそう。しがらみが少ない選択をし続けてきたことで柔軟に受け入れて来れた時代に応じた変化も、そのままその芸風の中に現れているのかなとも思いました。
変わることも簡単なことでは無く、何かを捨てること。そこで失われてしまうものもたくさんありますが、『落語を存続したい』という意識を持って、その時々の時代に合わせた生き方を選んでいく噺家たちの姿は、とても軽やかで、とてもかっこいいなぁと感じました。
そんな現実世界の噺家たちと同じく、本作に出てくる登場人物たちも、皆それぞれに秘密や寂しさを抱えてぶつかり合いながらも、それぞれに信念を持ち、その信念を守るために機嫌良く生きようとしている姿がとても印象的でした。すれ違い合いながら、一旦は距離が離れたりもしながらも、身近で関わってくれる人のことを簡単には見捨てないキャラクターばかりで、割とすぐにゼロか100かで考えがちな私にとっては、こういう人との関わり方もあるのかと、勉強になる部分もとても多かったです。
心の中にある秘密や寂しさはそのまま抱えたままでも見つけられる幸せもあるんだなぁーと。全てをキレイさっぱり解決することだけが正解の道では無いんだなぁーと。最後まで読み終わってそんな風に思いました。
また、落語についての解説も、史実や発刊当時の現代事情などに基づいてわかりやすくされており、同じ演目でも演じる噺家がどう捉えて、どう表現するのかによって千差万別なお話になるとのことも、とても興味深かったです。身振り手振りや扇子などの道具の使い方まで目の前で見届けられる寄席にもいつか行ってみたいと思います。
昭和元禄落語心中 著者:雲田はるこ
