こんにちは、空間デザイナーのナカザワフミです。
先日開催された目白庭園でのライトアップも無事に終わり、その時のことをまとめようと思いながらもだいぶ日が経ってしまいました。そういう時もありますよね、えぇ。
ライトアップを見に行ってくれた友人たち数名から『照明をデザインするってどういうこと???』と聞かれたので、デザインを決めるところから設営まで、私なりに考えていたことを書き記しておこうと思います。
①まずは現地を視察
空間系のデザインをする時はまずは現地を視察することが大事だと思っています。
写真などの情報はネットで検索すれば大体出て来るし、図面を見ればおおよそのサイズ感はわかるけれど、実際の広さ、高さ、奥行き、空気感、その場所の周りに何があるのかなど、その場を訪れないことには感じ取れないことがたくさんあります。
どんなに忙しくても必ず1度は足を運び、どのポイントが見せ場なのか、ここを光らせたらどんな雰囲気になるんだろうと、妄想にふける時間を取ることで、デザインにも深みが増します。
②次にコンセプトを決める
これは他のデザインをし始める時と一緒ですが、照明デザインもまずはコンセプトを決めるところからスタートします。
『日本』『和』『自然』『秋』『紅葉』『赤鳥庵(目白庭園内の茶室の名前)』などなど…キーワードはいろいろと出て来ますが、日本庭園を訪れた時に私が楽しむことは…と考えた時、『四季折々で様々な表情を見せる風景』であることが思い浮かびました。
そこから『四季をあらわす言葉といえば俳句の季語よね』と、秋に関する季語について調べている時に今回のコンセプト『冬隣(ふゆどなり)』を発見。言葉の意味を読んでいたら、今の自分の気持ちともリンクしていたのかとてもしっくりきたので、こちらをライトアップのコンセプトとすることに決めました。
③どこにどの器具を使い、コンセプトを表現するのか練る
実際に使う照明器具の選定や設置場所の検討などをしていきますが、この部分からは通っていたライティングデザインスクールの先生方にご協力いただきました。
まだどの器具がどんな明るさで、どんな雰囲気を作れるのか、さっっっっっっっっぱりわかりません(真顔)
なのでたくさん助けていただきました。馬場先生、小山先生、本当にありがとうございました。
まずは庭園内の平面図を使いながら、どの辺りの樹木などを照らすのかを検討。使用する器具の中には一定時間で色を変化させられるものもあり、それも見どころポイントとなります。
どの場所が明るく見えたらそちらの方に歩いていきたくなるのか、逆にどこを暗くしてメリハリをつけるのかなどを想像しながら設置場所の検討をしていきました。
設置する器具が決まったら、庭園内に数カ所ある既存のコンセントへの繋ぎ方を考えます。
各場所のコンセントの数や使用できる電気容量が決まっているのと、来場者が歩行中につまずかないよう通路部分を避けて配線を繋げなくてはいけないので、パズルのように頭を使う部分です(先生が)
ここで出来た図面を元に、現地で設営を行います。
④レッツら設営
庭園の休園日に現地へお邪魔して設営スタート。
まず昼間は各器具の設置や配線を済ませる作業から。
図面を元にひたすらコードと器具を繋げて設置しての作業ですが、庭園内の裏側は高低差があったり、図面だけではわからなかった障害物があったりするので、その都度その都度で最適解を考えながら解決していきます。その場にあるものでどうにも出来ない時は買い出しに行ったりもするので、頭と体フル回転で良い運動にもなりました。
そしてだんだんと空が暗くなってから実際に点灯し、バランスの調整を行います。
明るさの演出もメリハリが大事で、全てを明るく照らしてしまうとのっぺりと抑揚のない印象になってしまいます。そこで、暗い場所を意図的に作り出し、見て欲しい部分をより際立たせるよう器具を設置していきます。
本当は設営前に伝えなければいけなかった『時間軸を設定して色を変化させる演出について』も感覚的なものが実際見てみないとよくわからなかったので、設営のサポートをしてくれているカラーキネティクス・ジャパンさんに相談し、ここで実際の光の色や変化していくスピードを見ながら演出を決めていきました。
LEDが発する光の三原色『RGB』を組み合わせてコンセプトに合った色を作り、どのぐらいの間隔で変化し、また元の色に戻るのかも全てパソコン上で設定(カラキネさんが)、それを色の変化が出来る器具に繋げると設定したデータが反映されて、光が変化していきました。
頭の中で思い描いている色を伝えること、実際に見てみると印象が全く違うこと、やってみないとわからなかったことがたくさんあり、自分の掲げたコンセプトを表現するために何を正解とするのかも迷いましたが、カラキネさんはじっくり話を聞いて付き合ってくださったので、思い描いた演出にまとめることが出来ました。
個人的に1番感動したのがこの『雪吊り(雪による重みで枝が折れるのを防ぎ、寒風によるダメージを減らすもの)』へのライトアップ。松の木だけに光を当てるのもキレイでしたが、この雪吊りが追加されることで明るくなる部分が増えてインパクト倍増!人工物だけれどスラッとシンプルなデザインで、周りの自然ともケンカすることなく馴染みつつ、かといって埋もれることのない存在感もあって、この形状を考えた昔の人はすごいなーとしみじみ感じました。
⑤ついに完成、そして公開へ…
各器具の向きや樹木への光の当たり方などを微調整しては離れたところから確認を繰り返し、こうして無事に準備終了。2020年11月21日から9日間限定で公開されました。
『冬隣(ふゆどなり)』のコンセプトから想いを巡らせ、静かな力強さを感じる空間となるようにまとめたけれど、訪れてくれた方々はどんなことを感じてくれたのかを知りたくて、会期中はTwitterやInstagramで『#目白庭園』とエゴサーチしまくっていたことをここで告白致します。根暗でごめん。
好意的な意見もあり、否定的な意見もあり、様々な感想が見られましたが、今年は例年開催されていたライトアップが中止となってしまった場所も多かったため、鮮やかな夜の景色を楽しんでくれた様子の方が多く、私も嬉しかったです。開催することを決めてくれた目白庭園の皆さん、どうもありがとうございました。
以上、ライトアップの準備や会期中に私が考えていたことでした。
またいつかこういった機会に巡り合えるようにこれからも精進したいと思いますので、照明デザインのご相談もこちらのContactからお気軽にお問合わせくださいね。
今日もお付き合いいただきありがとうございました!
▼写真協力
かも ゆうこ/坪田 将知